ずっと前にね
何の話だろうと俺は携帯を開いてみた。すると、彼女から海と書かれたメールが入っていた。気付かなかった。卒業パーティにでも行くと言って出てきたのだろうか。それにしても夜道に女の子一人でいるなんて、この田舎町だから良いものの少し不用心だな。

「あ。悪い」

千里の事を考えていて気付かなかったなんて言えない。口が裂けても千里を手放さなければいけないんじゃないかって考えていたなんて言えない。
俺から突き放すような事を考えていたなんて知ったら彼女は絶対に傷付く。そして、実家への就職も来づらくなって辞めてしまうかもしれない。

「悩み事ですか?」

さすがに誰にでも分かるか。そりゃあそうだよな。俯いて真剣な顔をしていたら誰でも何かあったんだって思うよな。そうやって気付くのは俺に限らないんだよな。
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