誠の華−ヒルガオ−
恥ずかしい。
出来ることなら今すぐ消えてしまいたい。
「新雪、お前は美しく賢い女子だが…偽物みたいだな」
急に低くなった高杉の声に息ができなくなった。
「な、にを…言うで、ありんしょう?あちきが偽物?冗談は顔だけにしよし!」
「ふっ、なかなか愉快な女子だ。殺すのがもったいない」
「まぁ待て晋作。彼女の出所を聞くまでは駄目だ」
既に呑みすぎて大の字で床に寝転んでいる坂本以外にじわじわと端に追い込まれる。
何か、何か考えないと。
この状態じゃ山崎さんもきっと助けに来られない。
考えろ、考えろ!!
はっっっ!!!
頭から金きらした簪を数本取ると私は奴等の腕や脚に向かって投げつけた。
そして怯んだ僅かな隙を狙って襖の方までズザーーーーッと滑り直前でかっこよく止まるはずだったが、止まることができずに頭から襖に向かって突っ込んでしまった。
「キャーーーーッッッッ!!!」
運悪く隣の部屋にまで来てしまった私の正面には多くの女郎に囲まれ、鼻の下を伸ばす商人。
辺りに女郎の悲鳴が響き、高杉等の足音も間近に迫ったところで山崎が目の前に現れた。
「雪さん、今すぐ逃げますよ」
「はい!!!」
私は思い着物を持ち上げてなんとか山崎に追いつけるよう必死で走るが、身軽な高杉らはあっという間に私達に追いつく。
刀を持った七人に囲まれるが、私達は丸腰。
戦いようがなく最悪の状態が頭をよぎったその時、浅葱色の羽織を着た集団が見えた。