誠の華−ヒルガオ−




屯所へ着くと雪は土方の部屋に一人でいた。


誰がいたか、どんな話をしていたか、を細かく報告をすると何故か大きな溜息を吐かれた。


「まさかここまで出来がいいとはな。正直あんまり期待をしていなかったんだが…見縊れねえなお前は」


それは褒めてくれているのだろうか。


疲れが回って働きにくくなっている脳で考える。


「精神的にも体力的にも大分削がれましたが何とかやり切りました。最後にバレてしまったので完璧な潜入捜査とは行きませんでしたが…」


「初めてでこれなら上出来だ。潜入に関しては三馬鹿よりもよっぽと当てになる」



新撰組内では原田、永倉、藤堂をまとめて三馬鹿と呼んでいる。


確かに頭は悪いが幹部である三人よりも当てにされると正直嬉しい。



何より私を褒めてくれているのがあの土方だ。


「雪、今から言うのは副長から隊士に向けての言葉じゃなく土方歳三から近藤雪への言葉だ」


「うん?」


突然そんな事を言い出す土方を少し不審に思いながらも続きをおとなしく待つ。



「お前は試衛館時代からのみんなにとって大切な妹分だ。そんなお前に俺たちは危険な事は出来るだけやらせたくないと思ってる。だが俺は今新撰組の副長。お前にも危険な事をこれからもっと頼むことになる」


辛そうに話す土方を見て雪は強く握られた土方の拳を優しく包んだ。


「わかってるよ、歳さん。みんなが私のことを大切に思ってくれてることも危険な仕事がこれから増えていくこともちゃんとわかってるから。それに京に来た時点でそれは覚悟できてたから大丈夫よ」


「……本当に良い女になったな」


そう言って土方は雪の頭をクシャッと撫でた。


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