誠の華−ヒルガオ−




宵五つ


雪は近藤等に続いて池田屋の前で身を潜めていた。


続々と中へ入っていく尊皇志士をもう何人見送ったかわからない。


「どうやらこっちが当たりみたいだな」


ボソッと嬉しそうに言う数馬の腕をつねると「いでででっ」と大きな声で呻き、永倉から拳骨をもらっていた。


「お前のせいでお叱り頂いたじゃねえか」


「あんたの顔が不謹慎だったから成敗しただけ」


ぎゃいぎゃいと小声で言い合いをしていると私は総司から、数馬は再び永倉から拳骨を落とされた。


次はきっと勇さんの拳骨が落とされる。


勇さんの拳骨は総司よりも歳さんよりも何百倍も痛い。


故に戯れはここまでにしておこう。


きっと数馬も同じことを思っていたのかもう何も言ってこなかった。


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