誠の華−ヒルガオ−



可哀想な平助を置き去りにして雪は島原の大門の前で佇んでいた。


右手には京名物の八つ橋が入った包み。


行きたくないな。


でも行かなきゃダメなんだよな。


まだクズついてる気持ちに鞭を打つように両頬をパチンっと強く叩いた。


「行くぞ!!」


「雪さん、そんなところで何してるんですか?」


漸く大門をくぐる決意が出来たという時に聞きなれた声によって前に出かかった足を戻して後ろを睨みつけた。


その声の主とは、今井裕次郎である。


< 139 / 258 >

この作品をシェア

pagetop