誠の華−ヒルガオ−
「怖いの。あんなに良くしてくれたのに私は家を勝手に出てきた。会わせる顔…ないよ……」
俯きながらボソボソと話すと頭にポンッと大きな手が乗った。
「雪、おふでさんは何もお前を叱りつけるために文を寄越したわけじゃないよ」
勇さんの声に顔を上げると微笑みながら私を見つめていた。
その姿に少しだけ周助先生の面影が過る。
「ふでさんから届く文にはいつもお前の身を案じたものだ。ちゃんとご飯を食べているのか、怪我はしていないかってな」
予想もしなかった手紙の内容に目を大きく見開いた。
勝手に家を出た娘の身を案じてくれているなんて。
「お前の元気な姿を見ればふでさんも安心する。どうだい、一緒に江戸へ行かないか?」