誠の華−ヒルガオ−




それは突然だった。


【江戸に行く】とだけの置き手紙を自室に残し、組みを去った山南。


その事実に私達は頭が真っ白になった。


「総司、山南さんを連れ戻して来い」


いち早く我に帰った土方が言った一言に総司だけでなく私達も目を見開いた。


「これは、脱走だ」


悔し気に顔を歪める土方に私達は何も言えなかった。


返事をして部屋を出ようとする総司を土方は一度呼び止め、「大津まで行って見つからなかったら戻って来い」とだけ言うと山南さんの部屋に立ち尽くす私達を残して出て行った。


土方の言葉に隠された真意を読み取った私達の顔には少しの安堵が浮かぶ。



総司ならきっと山南さんを逃がしてくれる。


そう信じて私達はまだ体調が完全でない総司を送り出した。


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