誠の華−ヒルガオ−




もちろん気づいていた。


佐幕派の近藤さん達と尊皇攘夷の伊藤さん。


組の中でも思想は真っ二つに分かれている。


でも一つの組織として動いている私達が思想を違えることは許されない。


だから私達は気付かないふりをしていた。


違和感を感じながらも思想の違う上司達を信じて。


「近藤さんだって変わったよ。前は同志として俺達を扱ってくれていたのに、今は局長と組長で上司と部下の扱い。俺は昔の近藤さんが好きだったんだ」


やめて。


みんなが気付かないふりをしていることをこれ以上。


「局長と参謀の思想が揃わないから俺達の心も揃わない」


駄目、言わないで。


後戻りが出来なくなる。


「山南さんが死を持って組の確執を示してくれたのに、近藤さんは変わろうとしなかった。土方さんだって、あんだけ山南さんが反対したにも関わらず結局西本願寺に移転した」


「やめて!!それ以上言わないで!!みんなが気付かないようにしていた事を言わないで!!」


「やめない、そもそもそれが間違ってるんだ。新撰組は前みたいにみんなの意見を取り入れる事をせず全て近藤さんと土方さんの意思で決まる。俺達はあの人達の駒に過ぎないんだよ」



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