誠の華−ヒルガオ−





「ごめん、雪」と謝りながら総司は肩を震わせている。



雪は着物を湿らせるものに気づかないふりをして抱きしめていた頭も何度も撫でた。




しばらくそうしていると、総司が照れ臭そうに顔を上げた。




「私は何にも見てないから」



「…ありがとう」




涙を見られたくないであろう総司の意図を汲み取ってそう言った。




「今日は非番だから、好きなところに連れて行ってあげるよ」




帰るもんだと思っていた雪は突然の誘いに首を千切れんばかりに振り返らせた。




「本当?!」




そんな雪に総司は苦笑を浮かべながら「行きたい場所でもあるの?」と聞く。




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