誠の華−ヒルガオ−
「ねぇ歳さん。昔、私と総司と平助で吉原に行った歳さん達を追いかけたの覚えてる?」
雪の声に数年前の出来事を思い出し、「あぁ」と相槌を打つ土方に雪はクスッと笑った。
「あの時と同じ。みんながどんな場所へ行って何をしているのか知りたくて、総司と平助を道連れに試衛館を飛び出した。でも吉原の大門を見て私、怖気付いちゃった。2人はどんどん先へ進もうとするし、源さんが止めてくれなかったらあの時の私はどうなっていたのかな〜」
次節、笑みを零しながら昔を回顧する雪に土方は口を挟むことなく一心に耳を傾けた。
雪は馬鹿騒ぎをする奴らを一瞥すると深呼吸を1つしてまた口を開く。
「私はまたみんなを追いかけて未知の地へと足を踏み入れた。バカみたいに後先考えずにみんなに会いたい一心でね。まだここへ来て数日しか経ってないのにもう人を殺めちゃったし。私ってば昔から何も変わってないね」
どこか自嘲が混ざった笑みを浮かべる雪に土方はフンッと鼻を鳴らして笑った。