誠の華−ヒルガオ−
自分でやると決めたのだから今更駄々をこねるわけにもいかない。
しかし三日という少ない稽古日数で不安が増して精神状態があまりよろしくなかった。
小鈴が扇子を取りに部屋を出ている間に雪は抑えていた不安や文句がボロボロと出ていた。
「三日しか練習してないから絶対にボロか出るに決まってるわ。それによりにもよって変装が芸妓姿。嫁入り前だってのにそんな簡単に私の身体を汚い男に触らせたくない!ここの女の子達は小さい頃から稽古してきてたしそんなことされてもなんとも思わないかもしれないけど私は違う。今更逃げることも出来ないけどやりたくないこんな仕事いやだいやだいやだーーーーー!!!」
「まぁ、落ち着いてください。僕も小鈴さんもいますし失敗しても…あ……」
雪を落ち着かせようと言葉をかけていた山崎の視線の先には目に涙を溜めた小鈴さんがいた。
「あちきらやって…こんな商いやりたないでありんす。けど…物心もつく前に売られてきたあちきらに拒否権なんてありやしやせん。お雪はんはええどすな。今宵限りでありんしょう?あちきら芸妓はずっとこの籠の中の鳥でありんす。禿の頃から血のにじむ稽古を重ねてきたあちきらを侮辱するのはおやめくださりまし!!」