内実コンブリオ
だんだん距離が縮まっていく。
それでも、先輩がこちらを見ることはない。
「か、角野先輩…」
話しかけることができるほどに距離は縮まっても、心の距離はどこか遠いままだ。
例えれば、日本とネパールぐらい。
なぜネパール、と思っても気にしてはいけない。
「あの…先輩」
何度呼びかけても目線を向けてくれることも、何かしらの反応を示してくれることさえない。
先ほどからの秋独特の風がしばらく止み、更なる沈黙を作り出す。
お互いが他人行儀すら忘れ、相槌もできないまま銅像のように時間だけが過ぎていく。
先輩のその態度に生意気ながら、後輩である自分もさすがに少し腹が立った。
「…無視しやんといてください」
それでもやはり、返事が返ってくることはない。
相変わらず、そっぽを向いている。
相手の反応がないことがこんなに困る事だったなんて。
何も言ってくれないから、どうしたらいいのかわからない。
あれ、これって…
その時、ふと昔の自分のことを思い出した。