内実コンブリオ



こういう時、尚更迷う。

人が泣いている時は一体どうしたら良いものか。

ここで無視をすれば、なんて冷たい人間だ、と周りから思われるだろう。

実際、今周りに人はいないのだけれども。

しかし、だからといって泣いている相手に軽々しく声をかける、などということも出来ない。

何せ、自分は人の慰め方を知らない。

こんな所で一人でいるということは、きっと誰にも知られたくなかったのかもしれない。

自分はそう勝手に解釈した。

目的をさっさと済まし、足早にこの場を去ろう。

と、気を使ったつもりだった。

しかし、それが出来なくなった。

自分の必要な書類とは、その女性の真上にあったのだ。

結局、声をかける羽目になる。



「あの…すみません」

「うっ…く…」
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