内実コンブリオ
「あの、すみません。上を失礼します」
「…うぅっ」
これだけ呼びかけても気づかない程に傷付いているらしい。
何だかこのまま放っておくのは少し忍びなく思ったので、とうとうちゃんと声をかけることにした。
目線を合わせる為に、女性と同じ様にしゃがみ込んだ。
「あのー、大丈夫ですか」
またも気づいてくれる様なそぶりはない。
自分の声が小さいのかもしれない、と触れてみることにした。
そして、肩に手をのせた瞬間。
「ぎゃあああっ!!」
ものすごい叫びが部屋中に谺した。
それに驚き、こちらも思わず尻餅をつく。
「あの…すみませ」
「いつからそこに居たんですか?!」
「えっと…少し前からです。すみません。驚かせるつもりはなかっ」
「聞こえてました?!」
先程から女性は質問するばかりで困惑する。
そして、何のことだかわからない。
押し殺すかの様に泣いていた声のことだろうか。