内実コンブリオ
咲宮さんの悪口なんか聞きたかねぇ。

だが、たまたま隣にいた友人は無情にも俺の思いを裏切った。



「なんや、女子もあいつの事、嫌いなんか。なら、ちょうどええんちゃう?」

「な…何がだよ」



あえて聞いてはみるが、何となく予想はついてしまう。



「俺も気に入らんし、態度とか。ちょっと思い知らせたろか」

「やめろよ。あの子がお前に何したってんだよ」

「何って、あいつ蝋人形みてーだし。人の話、無視するしよ」

「ただの恥ずかしがり屋かもしんねーだろ」

「いや、あれは絶対違うな!すっげぇ目で睨んでくるしな!!」



確かにあの子の目は少し鋭い矢の様なイメージだ。

俺はその矢に見事撃ち抜かれた。

しかし、今はそんな寒いことを言っている場合じゃない。

あの子が周りからこれ以上疎外されることだけは、何としても阻止しなくては。



「話を聞かねーうえに、睨むなんて、人間のすることじゃねーよなぁ」



しばらく嫌な沈黙が続く。



「さあて、どうしてやるかな」


水川がそう呟き怪しげな笑みを見せた瞬間、周りの空気も人間も凍った様に見えた。

こいつはなんてどす黒い顔をするんだ。

一瞬周りは凍りついたが、俺は正直引いた。

水川は中学から知り合ったばっかりで今まで約3ヶ月程、一緒にいる。

やっぱりこの世の中には、「チュウニビョウ」という言葉があるように、中学生は情緒不安定になる時期なのか。

正直、今友人が怖い。

いや、こいつは本当に俺にとって、友達なのか?

本気でそんな事を考え始めている俺がいた。









第1章*栗山side 後編に続く。
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