内実コンブリオ

お互いが視線を合わせたままでいた。

しかし、その角野先輩の顔ったら、本当に心配してくださっている様だ。

こんな状況の中でも、ただ自分は静思していた。

本当にこの人は、根っから優しい人だな。

でも、少し大袈裟。

情緒不安定である様にも見えた。



「大丈夫ですから、どうぞ…お構いなく…」

「そんなわけないやろっ!あかん時はちゃんと言えよ、あかんって!!」



かなり驚いた。

冗談でもこの人に、ここまで強く怒鳴られたのは、初めてだった。

また「あっそう」とか言って、去ってくれるのかな、と思っていたのに。

なかなか退かない。

しんどい時ほど一人にしてほしいのに。



「これ以上、仕事を溜めたくはないので…」

「それでミスされても困るわ」

「…大じょ」

「ああっ、もう!」



大分苛立ってみえる様で、乱暴に言い放つ。

それと同時に、脇の下から背中へと手をまわされ、気づけば景色が高くなっていた。

そして、手を引かれるままどこかへと歩いていく。

ある場所へ着いた時には、体力の限界、足の力が一気に抜けるのを感じ、自分はその場でしゃがみ込んでしまった。

徐々に意識が薄れていくのが自分でもよくわかり、いつの間にか黒い景色に包まれたのだと、思う。
< 122 / 393 >

この作品をシェア

pagetop