内実コンブリオ
お互いが視線を合わせたままでいた。
しかし、その角野先輩の顔ったら、本当に心配してくださっている様だ。
こんな状況の中でも、ただ自分は静思していた。
本当にこの人は、根っから優しい人だな。
でも、少し大袈裟。
情緒不安定である様にも見えた。
「大丈夫ですから、どうぞ…お構いなく…」
「そんなわけないやろっ!あかん時はちゃんと言えよ、あかんって!!」
かなり驚いた。
冗談でもこの人に、ここまで強く怒鳴られたのは、初めてだった。
また「あっそう」とか言って、去ってくれるのかな、と思っていたのに。
なかなか退かない。
しんどい時ほど一人にしてほしいのに。
「これ以上、仕事を溜めたくはないので…」
「それでミスされても困るわ」
「…大じょ」
「ああっ、もう!」
大分苛立ってみえる様で、乱暴に言い放つ。
それと同時に、脇の下から背中へと手をまわされ、気づけば景色が高くなっていた。
そして、手を引かれるままどこかへと歩いていく。
ある場所へ着いた時には、体力の限界、足の力が一気に抜けるのを感じ、自分はその場でしゃがみ込んでしまった。
徐々に意識が薄れていくのが自分でもよくわかり、いつの間にか黒い景色に包まれたのだと、思う。