内実コンブリオ
彼女は外に出たと思えば、ベンチを通り過ぎ、螺旋階段を登っていく。
「え…どこ行くの?」
「屋上っ!」
うちの会社に屋上などあっただろうか。
上から自分を見下ろしながら、何の躊躇もなく、そういう彼女は素早く階段を上がっていった。
自分はというと、息も切れ気味で必死についていく。
やっとこさ、彼女の足が止まったかと思えば、景色がずいぶんと高くなっていた。
そことは、本当に屋上だったのだ。
景色にしばらく見とれ、口をポカーンと開けて、しばらく呆けていた。
「綺麗やろ!」
「う、うん…」
運動神経がほぼ無いに等しい自分は、不規則な呼吸をしながら答えた。
予想していた通りに風こそ冷たいが、空は雲一つ無い。
それでもって、田園が敷き詰められた様に広がっている。
こんな素敵な場所が、存在していただなんて。