内実コンブリオ
角野先輩も、森緒ちゃんも、全て見事に作り上げられ過ぎた妄想にすぎなかったのか。
さあ、これから体育祭の練習が始まるそうだ。
皆がざわめき、自分が走る。
走っているはずなのに、上手く前に進めていない。
まるで、足首に重りを付けられた様に、動かない自分の足がもどかしい。
ゴールテープを切ると、自分の周りに人が集いだす。
「もっと本気で走れよ!」「お前のせいで負けたし」「最悪」「ああっ、イライラする」「存在がうぜぇ」
彼らから次々に聞こえる、音。
慣れているはずが、刺激されて泣きそうになる。
別に、泣きなんてしないけど。
人間の摂理で瞬きをした瞬間、景色が変わっていた。
木目の床、人が入る度にガラガラと大きな音をたてる古びたドア。
縦と横と綺麗に揃えられた、35個の机たち。
それに従って座る、天川中学校の制服を着た生徒たちがいる。