内実コンブリオ



そして、遂に本番当日を迎えた。

自分は、既に会場である近所の大学の駐車場にいた。

故郷を出るのをきっかけに、父と一緒に選んだ愛車と共に。

普段はアパートの駐車場にいます。

ちなみに駐車スペースは有料です。

とてもどうでもいい話だ。

今の時刻は、全体集合の40分前とはいえど、自分たちで決めた集合時間を余裕で過ぎている。

全く、何をしているんだ、先輩は。

自分は自車の中で、発表練習をしていた。

原稿を約1周半できるほどの時間、約30分になると思う。

いや、ちょっと待てよ。

待たせているのは、実は自分なのかもしれない。

意外と先輩は中で待っているのかも。

あれ、じゃあなぜ、こんな時に限って、電話をしてこないのだろう。

…とりあえず、中に入ればわかるはず。

先輩にメールで一言入れてから、車を降りた。

そもそも、自分が1時間も前から待機していた理由は、角野先輩にある。

それは、昨日の仕事終わりに、声をかけられたことによって始まった。



『明日、とうとう発表会やなー』

『発表会…そうですね』

『絶対、遅刻とかしたらあかんで!しそうやなー、華ちゃんなら』

『しません!いや、できませんよ、そんな勇者みたいなこと!』

『そお?俺はいっつも大事な日っていうたら、体が拒否して、ぎりぎりに起きて、三度寝、当たり前やで?』

『戦士ですね』

『まあ、念には念をということで、1時間前集合な!ひょっとしたら俺、無理かもしれやんけど、そん時はごめん』

『社会人としてどうなんですか、それ』



ざっとこんな感じのやり取りだった。

くだらない茶番につき合わされた様で、1時間集合の10分前には居たのだ、たった一人で。

これはおそらく、彼曰く当たり前のように、三度寝でもしているのだろう。
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