内実コンブリオ



「出なくて良かったんすか?」



栗山くんは気を遣って、自分に問いかけてくれた。



「あ、はい。上司を待たないといけないと思うので」



なんか、変なの。

昔はこの人の前では、まともに声も出せなかったのに、今はこんなにも落ち着いて話すことが出来ている。

不思議、としか言いようがない。

扉の前で突っ立っていては、他の人の迷惑になると思い、自分は壁の方に移動する。

すると、何故か栗山くんもついて来る。

自分の隣で壁にもたれて、そのまま動こうとしない。



「…上司の方のところに戻らなくて、いいんですか?」

「大丈夫っすよ。俺もその上司を待ってるんで」

「そ、そうですか」



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