内実コンブリオ
あちらも知らない電話番号に不信に思っているのか、なかなか受話器を上げてくれない。
「…もしもし」
やっとこさ出てくれたと思えば、明らかに声は不審がっているようだ。
こちらからも恐る恐る、声を発する。
「…咲宮です」
「えっ…?!っ、いって!」
電話の向こう側から、ゴンッ、という様な何やら痛そうな音が聞こえた。
「だ、大丈夫ですか…?」
「あ、はい!てか…絶対、連絡くれないだろうなー、って思ってたんで、めちゃくちゃ嬉しいっす」
「…何ですか、それ。それより、あの…!一つ伺いたいことがあって、お電話しました」
「何すか?」
「…一体、どういう時に連絡したらいいんですか?この番号」
それを言った瞬間、吹き出す音が、電話口の向こうから聞こえた。
真剣に悩んで、真剣に聞いたのに。
栗山くんは「ごめん、すいません」を繰り返してはいるが、声が笑いを必死に堪えていた。