内実コンブリオ
すると、自分から見て左側の扉「給湯室」の扉が、突然に開く。
自分はというと、扉と正面から衝突するかしないか、という間一髪の状況で止まったのだった。
扉を開けた張本人は、森緒ちゃんだったらしい。
「あれ、華やん。もう帰んの?」
「あ、うん」
「ここでお茶してく?」
森緒ちゃんの満面の笑みに、少し後ろ髪を引かれた。
いつもなら喜んで寄るところだが、今日は無理だ。
ガラパゴス携帯を開き、時計を確認すると、待ち合わせの時間は迫っていた。
「ご、ごめん。今から用事があって。今日はごめん…!」
森緒ちゃんには申し訳なく想いながらも、自分は再び必死に、はや歩きを始めた。
「…変な華」
不思議がる彼女の呟きは、当然だが、もう自分には聞こえなかった。