内実コンブリオ






そのまま、はや足を続け、やっと会社の最寄駅へと到着した。

駅前のロータリーは、みんなの帰宅時間と重なり、ひどく混雑している。

駅前の時計は、約束の時刻を7分過ぎていた。

慌て気味に、自分はきょろきょろと辺りを見回した。

すると、既にロータリーに何台かが止まっている。

そのうちの一台の黒い軽自動車の前に、スーツ姿の男性がこちらに向かってだろうか、大きく手を振っている。

あれは、自分に向けているのか?

試しに、恥ずかしくない程度の会釈をしてみる。

その手を振る相手から、会釈を返された。

ああ、間違いない。

あれが、あの人だ。
< 203 / 393 >

この作品をシェア

pagetop