内実コンブリオ
この物語の冒頭で言ったことをもう一度自分で言うのもなんだが、俺は男女問わず友達が多い方で、学校の中でも結構人気がある。
だから、何かと自信がある俺。
咲宮 華さんには親切に接してきたつもりだし、よっぽど嫌われていない限り平気だろう。
準備は出来た。
今こそ、言ってやる!
「…っ、咲宮さんっ!」
咲宮 華さんは、黙々とカッパを着続けている。
むしろ、少し焦りだした様にも見える。
目線は決して上がらない。
だが、これもいつものこと。
俺は一切気にしない。
「あの………付き合ってくださいっ!」
ちがーう!
何言ってんだ!俺の馬鹿野郎めが!
「いや…あの……その…えっと………」
周りで仲間たちも見ているってのに、俺のこの慌て様。
本来の俺なら、優しくて、常にクールな人を演じたいがために、こんな風な姿は絶対、人前では見せたくはなかった。
だが今はどうだ?
それどころなんかじゃない。
あまりに必死になりすぎて、素が出てしまっている。
本当の俺が出てしまっている。
「………好きっす」
必死な俺がやっと出せた言葉。
ほんっとにらしくねぇ。
その後、一体どうなったと思う?
俺にもわからない。
緊張のあまり、その後は頭が真っ白になっちまって、全く覚えがない。
だが、言葉は無かったが、ただ一つわかった。
やっぱり俺、駄目だな。
自分の馬鹿さ加減になんかいろいろ思い知らされた。
こうして、俺たちはむせ返りそうな程に暑い夏を向かえた。
第1章*栗山side 終わり。
第2章*咲宮sideに続く。