内実コンブリオ

この物語の冒頭で言ったことをもう一度自分で言うのもなんだが、俺は男女問わず友達が多い方で、学校の中でも結構人気がある。

だから、何かと自信がある俺。

咲宮 華さんには親切に接してきたつもりだし、よっぽど嫌われていない限り平気だろう。

準備は出来た。

今こそ、言ってやる!



「…っ、咲宮さんっ!」



咲宮 華さんは、黙々とカッパを着続けている。

むしろ、少し焦りだした様にも見える。

目線は決して上がらない。

だが、これもいつものこと。

俺は一切気にしない。



「あの………付き合ってくださいっ!」



ちがーう!

何言ってんだ!俺の馬鹿野郎めが!



「いや…あの……その…えっと………」



周りで仲間たちも見ているってのに、俺のこの慌て様。

本来の俺なら、優しくて、常にクールな人を演じたいがために、こんな風な姿は絶対、人前では見せたくはなかった。

だが今はどうだ?

それどころなんかじゃない。

あまりに必死になりすぎて、素が出てしまっている。

本当の俺が出てしまっている。



「………好きっす」



必死な俺がやっと出せた言葉。

ほんっとにらしくねぇ。





その後、一体どうなったと思う?

俺にもわからない。

緊張のあまり、その後は頭が真っ白になっちまって、全く覚えがない。

だが、言葉は無かったが、ただ一つわかった。


やっぱり俺、駄目だな。

自分の馬鹿さ加減になんかいろいろ思い知らされた。

こうして、俺たちはむせ返りそうな程に暑い夏を向かえた。










第1章*栗山side 終わり。
第2章*咲宮sideに続く。
< 21 / 393 >

この作品をシェア

pagetop