内実コンブリオ

何かが変わったのは、自分の自己満足の中だけだと思っていた。

けど、それだけじゃなかったらしい。

ちゃんと表にも伝わっていたことが、嬉しかった。



「どこが、って聞かれても…まずは見た目?」

「髪、切ったから…?」

「うっ、そうかもしれない」



栗山くんが顎に手を当て、考え込む。

うーん、と深く考え込んでいる。

どちらかと言えば、悩んでいる?



「あと…」



自分の変化したところを必死に考えてくれているのであれば、非常に有難いことだが、徐々に申し訳なさが自分の中で主張を始めた。



「無ければ無いで、いいんですよ。なんかすみません」

「いや、ほんと申し訳ない」



なんだか、自分の考え過ぎだったようだ。

自分で変わったと思っていたが、それすらも勘違いで、いよいよ本当に自己満足だったらしい。

内心で言葉、形にならない軽いショックを受ける。

かるくショックを受けただけだから、自分にとって、特に何の支障も無い。

自分で信じるのは、勝手。

とりあえず、自分の中では変わった、そういうことにしておく。

別に理解されなくたっていい。

こんな風に想えるようになったこと自体が、もう昔の自分とは違う。

それに比べて、本当にこの人は。



「栗山くんは、まったく変わらないんだね」



その言葉の後に「もちろん、いい意味で」と付け加えると、栗山くんは照れくさそうに笑った。

変わらない、ということは周りの環境があの頃から、あまり変わっていないというような理由があるのだろうか。

周りにいる人たちも?
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