内実コンブリオ
何もしていないのに、栗山くんが驚いたように突然、小さく跳ねた。
そして、自分もそれに驚く。
彼を驚かせた正体とは、スマートフォンであったらしい。
栗山くんはズボンのポケットからそれを取り出すと、机の上に置き、片手で操作を始めた。
そのとき、不意に見えたものがあった。
「あ、えっと…その子、かわいいよね」
自分の何ともぎこちない話し方に、栗山くんは不思議そうに、顔をこちらに向けた。
「その子」ともう一度呟きながら、スマホ画面に指をさす。
すると、栗山くんは頬を赤く染め、汗を垂らしている。
その表情は、いまいちどういった感情を表しているのかわからず一瞬、自分は戸惑ってしまった。
残念ながら、口下手な自分は、そこから会話を続ける糸口が見けられなかった。
なんだか話の振り方を失敗してしまった気がして、恥ずかしさが込み上げた。
無意識に自分の目は、水が3分の1くらい減ったグラスを見つめだす。
そして、これもまた無意識のことで、唇を噛締めかけたとき。
「意外だね…!」
突然、大きな声を栗山くんが発した。
心なしか、生き生きしている。