内実コンブリオ
「やっぱり可愛い子とか、好き?」
「…え」
そのままのテンションを保って、そのままのノリで言ったつもりだった。
自分が余計な一言を発した瞬間。
さっきまで盛り上がっていた空気が、ゆっくりと、そう徐々に常温に戻っていく。
まるで、絵の具をパレットの上でかき混ぜている時の様に、色が変化していくのがよくわかった。
改めて、よくわかった。
自分は、話の振り方を失敗した。
いつの間にか、本当に微かなパニックに陥った自分は、周りの風景もシャットダウンしていた。
そして、掘らなくてもいい穴まで、自分で掘っている。
さらに、それにはまっていく。
「いや、あの…べべべ、別に変な意味じゃなくって!」
ああ、そんなことも言わなくていいのに。
何とかこの状況から脱しようとして、余計な一言が口からどんどん出そうになる。
でも、やっぱりそれを止めてくれたのは、栗山くんだった。
「あはは!何、変な意味って!」
あれ…?自分が思っていた反応と違う。
何故か、大笑いされている。
栗山くんの一言で、周りの色が突然に変わった。
優しい色に変わった。
自分の騒がしく混ざった色に、栗山くんの優しい白が加わった。
本当に彼の人間性には、恐れ入る。
人の優しさが身に染みた、そんな5時間だった。