内実コンブリオ
無いものは、無いのに。
目線をパソコンへと戻す。
「展示会告知チラシの制作しろ、って言われても…毎回、同じもの使ってたはずなのに…」
ぶつくさと文句を呟いた、まさにその瞬間。
「何か、言った…?」
「いっ、いえ!何も!」
背後から伸びた、妙に不気味な影。
毎日のようによく聞きなれた、恐ろしげな声。
振り向かずに、慌てて返事をしてしまった。
きっと今日一日で一番、身体が強張った瞬間だったと思う。