内実コンブリオ
「あ…角野先輩。お疲れ様です」
「え。今、俺やって気づいたん?」
「すみません。床を見て歩いていました」
「あかんよ。ちゃんと前見て歩かな。あ、あのさ!ちょっとだけ話さん?」
「え、あ…はい」
返事をして、同意した筈なのに、不思議なことに自分自身が納得していない。
相変わらず、自分すらもコントロールすることが出来ていない。
どうすれば、自分は常に不安を抱きながら過ごさずに済む?
その方法は、自分の中で、もうすでに思い浮かんでいる。
そんなことを思っていた時、角野先輩が唐突に会話を始めた。
「なんか華ちゃんて、俺のこと恐がっとるよな?」
「…え」
先輩の顔をじっと見つめるが、表情が何となく読み取れない。
笑っている、微笑んでいる、どちらかと言えば、穏やかな表情。
どうしよう。
なんだか、恐い。