内実コンブリオ
行き止まった何かとは、壁だった。
今、やっとそれに気づくことが出来た、と思った瞬間に、視界が僅かに暗くなった。
気付けば、自分の顔の横に、角野先輩の腕がある。
先輩は、壁に手をついている。
あまりにも、突然の状況に頭が追いついて来ない。
「正直に言っても、の続きは…?」
思わず、顔を逸らす。
先輩の顔が微妙に近くて、言葉が出てこない。
どうしよう。
逃げ方がわからない。
言葉もそうだけど、何より物理的な問題での逃げ方がわからない。
この相手が水川だったなら、思いっきり引っ叩いてでも、逃げてやるところだ。
でも、角野先輩が相手ではそんなこと、とても出来やしない。
どうしよう、どうしよう…!
考えている間に、先輩との距離が縮まっている。
距離が縮まっている…?
…大変だ。
どうしよう、どうしよう、どうしよう…!
自分は咄嗟に、両手を前に突き出していた。