内実コンブリオ
また自分が、傷つけるようなことをしてしまったのだろうか。

一人取り残された廊下で、改めて考える。

もしかして、さっきのあれは、しばらく流行の「壁ドン」ってやつだったのか?

そういうのって、少女漫画の中だけでの産物だと思っていた。

実際に、この機会に出くわした感想は、ドッキリだ。

これは、ドキッではなく、ドッキリだ。

少女マンガの主人公のようにときめく前に、頭が一瞬、静止する。

あれがもし、壁ドンだとすれば、先輩も何も考えずにしたわけではないんだろう。

このままでは先輩をも、中途半端にさせてしまう。

それにしても、こんな時期がやってくるなんて、思ってもいなかった。

人に好意を持ってもらえる時が。

でも、馴れていないから、うまく対応することが出来ない。

もしも、自分が先輩にお付き合いを申し込んだとして、ある程度決まった幸せな結果が、待っている。

でも、その時点では、自分は自分自身に嘘を吐いているんだ、きっと。

何かが、はまらない。

自分が納得できないかもしれない。

考えていたら、ドラマの話題で盛り上がる社員さんたちが通り過ぎていくのに、気付くことが出来なかった。
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