内実コンブリオ



「全員分って、王様かよ」



自分が言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。

てっきり自分に向かって、その言葉を吐いているのかと思い込んでいたからだ。

言うまでもなく、その言葉は森緒ちゃんへ向かって、放ったものだった。

この何とも微妙過ぎるタイミングで、水を持ってきてくれた店員さんに、軽く会釈をした後、森緒ちゃんの表情を覗き見てみる。

当然、不愉快そうな顔でいる。

自分がどうにかなるかもしれない、と思っていた二人は、もはやどうしようもなかった。

二人はどうなりたいのか。

森緒ちゃんからは、相談された時に「仲直りがしたい」と、よく率直な気持ちを聞いてはいた。

しかし、何も見えてこないのは、彼氏さんの思いだ。
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