内実コンブリオ

彼はわざと、煽るようなことを言っているように見える。

今もまさに「俺たち、やっぱり会わない方がよかったな」なんて言っている。

二人を交互に見てみれば、未だ睨み合っていた。

そんな二人を見ていると、何だか自分には、二人は元々こんな風であったように思えて仕方がない。

これだけ向き合えているのだから。

当事者ではない自分は、何とも言えないところなのだが。



「ちょ、ちょっと…一旦、落ち着きましょう?」



自分が小さく怯えながら、そう言うと、彼が今度こそ確かに、大きく溜息を吐いた。

自分はそれに、また体をびくつかせる。



「あんたさぁ…何なの?」



まずい。矛先が明らかに、こちらに向いた。

そう感じるほど、悪寒がした。
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