内実コンブリオ
喧しいと言うべきか、賑やかと言うべきなのか。
そんな居酒屋の中で、自分は悩んでいた。
グレープフルーツのソフトドリンクなのか、サワーなのか。
そんなことを座敷席で、正座をしながら、真剣な面持ちで悩んでいたのだ。
「決めた?」
斜め前に座る栗山くんにそう尋ねられ、慌てて返事をする。
決めた、ソフトドリンクだ。
あまりお酒に強い方ではないため、少しでも酔ってしまう。
そんな姿を見せては、とてもこの場に居られない。
ここは用心に用心を重ねて、ソフトドリンクだ。
「ご注文、伺います」
「生一つ。華さんは?」
「あ、ソフトドリンクのグレープフルー―
「え。やっぱり飲まないの?」
「え」
自分が注文しようとしたのを、栗山くんに遮られる。
自分は驚き、動きを止め、彼の方を見つめた。
店員さんも、自分につられてか、自分に固定していた視線を彼に移す。
自分と栗山くんの特に意味のないにらめっこを、店員さんが交互に見ている。