内実コンブリオ
我ながら、なんて小っ恥ずかしいことを言っているのだ、と顔が熱くて仕様がなかった。

最早、癖になっているようで、下へ行っていた目線を上げる。

もう栗山くんは、しょぼくれてなどは、いなかった。

ただ栗山くんは静かに、呟くようにして言った。



「本当に、人がいいよなぁ…華さんって…」



その言葉に自分は否定しつつ、苦笑いをする。

もちろん自分は、自分のことを少しもそうは思えない。



「いや、ほんとに。だって、普通ならもっと責めるよ?他の子とか」



妙に何かが、引っかかった。

自分は苦笑いのまま、動きを止める。

「普通なら」「他の子とか」

少し前まで自分の心は、何も無い澄み切った水面の様であったのに、突然にざわつく。

黒い生き物のようなものが、自分の心の水面下で動き回っている。

それによって、波が立つ。

ほら、やっぱり自分は、人が良くなんて、まっぴらない。

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