内実コンブリオ
普通なら、こんなことにいちいち悪く反応なんてしやしないのに、多分。

とりあえず、弁解をしておく。



「いやいや。自分がよく遅刻する人間だから、人のこと、何とも言えないなぁ…って思って」

「え、華さんって遅刻とかするの?真面目そうなのに、意外だわー」



さっきから自分は、何度も苦笑いのようなものを重ねている。

別に、愛想笑いなんかじゃない。

ただ、褒められる類のことに馴れていないだけ。

何だかんだ言って、照れてしまう。

店員さんが、ようやくお通しと注文したものを届けてくれた。

口を一口、付けたグレープフルーツのサワーは、氷まで入れられていて、キンキンに冷えている。

テーブルに届いたとき、冬なんだからこんなに冷やさなくたっていいのに、と思った。

でも実は、丁度良かったりもした。

なぜなら、顔は十分に熱くなっていたから。

そのことに気が付いたのは、サワーが3口ほど喉を通った後。

自分で自分に思った。



「意外…」

「ん?」



斜め前に居る人は、優しく微笑んでくれる。

自分は「何でもないよ」とはにかみ首を振った。
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