内実コンブリオ
1日をどっぷりと使い切った自分は、ただでさえ運転してもらっているというのに、ゆきちゃんの車に揺られて眠ってしまった。
目が覚めれば、もう家に着いていた。
辺りも真っ暗だ。
「今日は本当にありがとう」
「いーえ、また遊びに行こな!気分転換、大事やで!」
「うん!ゆきちゃん、気をつけて帰ってな!」
「ありがとう。じゃあまたなぁ」
ゆきちゃんと別れるのがとても名残惜しい。
もう少し一緒にいたかった。
そんなことをお母さんに言ったら、「あんたらは恋人か!」とつっこまれた。
それくらいゆきちゃんが好き。
そして、本当は忘れてていい事を思い出すようだけど、どうして今日のお昼、頭に栗山くんの顔が浮かんだんだろう。
どうしてあの時からあの人の事が忘れられないでいるんだろう。
不思議といろいろな想いが頭の中を駆け巡り、眠れない夜が続いた。
そして、楽しかった夏休みはあっという間に終わり、明日から学校が始まる。
宿題もまだ全然終わっていないというのに。
また、自分にとっての闘いが始まる。
あんな奴らに負ける気なんて、まるでしない。
負けたくない。
そう思っているはずなのに、いまいち気持ちが入らない。
どうして?
いつもなら「よっしゃ」て気合い入るところなのに。
どうして?
あの人の顔が浮かぶのは。
第2章*咲宮side 中編に続く。