内実コンブリオ

話をしている途中で、森緒ちゃんが隣の上司のコップが空いたのを、横目で確認していた。

森緒ちゃんはピッチャーを持ち上げ、笑顔で酌をする。

それを見て、今まで話に夢中になっていたことを反省した。

慌てて鍋料理を取り分ける。



「華ちゃん。隣、座ってもいい?」



見上げると、角野先輩がいた。

先輩は自分が返事をする前に、座る体勢に入っている。

森緒ちゃんと職場なら誰がいい?というさっきの話をしていたからか、妙に動揺してしまう。



「あ…お、お料理、取り分けます」

「お。ありがとう」

「い、いえ」



ゆっくりと、角野先輩から器を受け取る。

…何故だ。何故だ、自分。

手が小刻みに震えているぞ。

上手く白菜が器に入らない。

白菜と格闘している自分の横で、先輩は腕捲りをし始めて、おまけに溜め息まで吐く。


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