内実コンブリオ
水に入ったグラスを二人、同時に口に付ける。

そして、目が合う。



「あのね…角野先輩と、ちゃんと話せたよ。でもね、傷付けちゃって…」



森緒ちゃんは「えっ」と高めの声を漏らした。



「華、角野さんに告白しに行ったんじゃなかったん?」

「やっぱり、勘違いしてたんだね。その逆。お返事をしてきた。でも、難しいね。ちゃんと断るって。声が震えて…上手く伝えられたか、わかんないや」

「…そっか」



頬杖を突きながら森緒ちゃんは、珍しく困っていた。

言葉を探してくれているんだろう。

気を遣ってもらうのは、本当に居たたまれない気分になる。



「でも、あれだよ。どんな理由であれ、断られたら傷付くよ。それは当たり前。だから、大丈夫。気にしなくたっていいって。だって、角野さんだし!」

「うん、申し訳ないけど…でも、これで前に進める気がする」

「ほお?ということは、お主。想い人が居るなぁ?」



自分が言葉に詰まれば、森緒ちゃんの口角はどんどん上がっていく。
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