内実コンブリオ
「な、ない…」



森緒ちゃんはわかりやすく、目を見開く。



「えー?!うーん。彼、かわいそ。でも、確かに華なら、最後まで何も言ってくれなさそう」

「そ、それは…」



彼女には、完全に自分を見抜かれている。

やっぱり、この子はすごい。

確かにあの頃も、何も言えなかった。

声を発してすらいなかった、それが事実だ。

でも、あの頃の自分は思春期にも関わらず、色恋について、よくわかっていなかった。

それは、今もかもしれないけど。

そんな自分だから、この気持ちの伝え方すら知らなかった。

一体、どうやって。



「一体どうしたら、伝えられるんかな…」



自分は一度、箸を置く。

そして、水をゴクゴクと2,3口飲んだ。

喉に何かが、引っかかっているようなそんな気が、しないでもなかった。

< 366 / 393 >

この作品をシェア

pagetop