内実コンブリオ
森緒ちゃんは、そんな自分を見ると、お好み焼きを口に頬張り、言う。



「まずは、好きって言えば、良い!」



多分、そう言ったのだと思う。

未だにモゴモゴと、口を動かしている。

何と言っているのか、正直、聞き取りにくかったが、おそらくそう言ったのだろう。

本当に学生に戻ってしまえそうな気さえ起こる、なかなか初歩的な伝え方。

20代後半を過ぎてもまだ、と思うと、少し笑えてきた。



「好き、って言うのか…」

「そう!」

「今になってこんな…なんか我が儘が過ぎて、自分って子どもみたい」

「子どもで十分!華があれこれ考えるのは、まだ早い!それに…」



森緒ちゃんは言葉を途中で止めて、箸でお好み焼きの上のマヨネーズをいじる。

その行動の一つひとつにも意味があるのか、と森緒ちゃんの箸先を見つめた。

しかし、やっぱり特に意味は無かったようだ。

森緒ちゃんは顔を上げ、言った。



「それにさ、やっと決心がついたんやろ?」
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