内実コンブリオ



せっかく決心したのだから、今、動かないと。

きっと身動きが、取れなくなってしまう。

決心が、鈍る。

6時半に起床して直ぐ、自分はアパートの自室のカーテンに手をかけた。



「わあ…」



窓の外には白い雪の精がチラホラと、ちらついていた。

この長年かけて、ようやくついた決心を鈍らせるように。

本当に意地悪だ。

躊躇ってしまいたくなる。

今日は栗山くんと、午前中から会う日。

偶然、二人の休みの日が合ったのだ。

自分から誘った。

自分にとっては、一生にあるかないかというくらいの決心。

これで駄目だったらば、どうしようか。

深呼吸をゆっくり、ゆっくりと繰り返した。

顔を洗おうと、洗面所に向かう。

鏡の前に立った。

まだ何をしたというわけでもないのに、今にも泣きだしそうな顔をしていた。

朝から、こんなことじゃ駄目だ。

きっと一日も、もたない。

気合を入れるために、顔に水を勢いよくあてた。

あまりの冷たさに身震いをする。

それを修行だと思い、耐える。

そうしていれば、痺れるほどの冷たさは、いつの間にやら慣れてしまって、何とも思わなくなってしまった。

気になる対象は水の冷たさなんかよりも、足元を濡らした水の鬱陶しさに変わっていった。
< 370 / 393 >

この作品をシェア

pagetop