内実コンブリオ
「お、おはよう。ごめんなさい。待たせた?」
「華さん、おはよう。全く待ってないから、大丈夫。行こうか」
「あ、うん」
この駅で待ち合わせたのには、別に大した理由があるわけではない。
ただ、この付近に大きめのショッピングモールがある、と考え付いただけだ。
ここでなら、うまく時間を潰せるだろう、と考えただけだ。
そこへ向かう途中にも、小さな雑貨屋さんを覗いてみたりした。
ぽっちゃりとした黒猫の置物だとか、ピンクと白の花があしらわれた髪留めだとか、ブルドックのぬいぐるみだとか。
店内を浮かれて見て回る自分の姿を見て、栗山くんは言う。
「華さんも、こういうの好きなんだね」
「ご、ごめん。退屈やったよね」
「ううん。むっちゃ楽しい」
そこで我に返り、一度に恥ずかしくなった。
何故か、声を押しころして笑う栗山くんに、少しムッとする。
普段から地味な自分には、似合わないとでも思われているのだろうか。
別にそれは、それでいい。
その後も、特に何も買わなかったが、可愛いものを堪能して店を後にした。
コンクリートの道路の上を、再び歩き始めた。