内実コンブリオ
教室では女子が騒いでいる。
とにかくうるさい。
常に黙っている自分にとっては、この状況はうるさくてしょうがない。
「まさか、告白する前から両想いやったとはなー」
「うらやましいぞー、こいつー!」
「まさに相思相愛やん?!」
「もうっ、だからぁ!」
「しかも、1年生の時からて!」
話題の中心になっている人物は、幼稚園からの自分の幼なじみである咲宮 結菜。
家もかなり近い。
本当にかわいくて、美人。
それにスポーツもできて、頭もいい。気立てもよくて、男女問わず好かれる。
まるで栗山くんと同類。
幼稚園から中学2年生に上がるまで仲がよかったはずなのに、突然一言も話さなくなっていった。
今の状況になってからは、話しかけてくることもなければ、目すら合わさない。
10年以上の友情でも失くなる時は一瞬だ。
まあ、よくある話しか。
「おっ、ダンナ来たで!ダンナ!!」
「あ…!」
昔から一応今まで一緒にいたというか、見てきたけれど、そんな女の子独特な表情ははじめて見たぞ。
幼なじみをそんな顔させるのは、どんな奴だろうと目だけを動かした。
納得した。当たり前だと思った。
ダンナと言われていたのは、栗山くんだった。
ていうか、美男美女カップルじゃないか。
そりゃあのペアだったら、みんな認めるわ。
なぜか残念と言うにはあまりにも違って、身体の中を何か黒く重苦しいものが、ドロドロと流れていくのを感じた。
そして、わかった。あの日のこと。
やっぱりただのからかいだった。
心のどこかで実は自惚れていた自分はただの馬鹿だ。
わかったはずなのに、パズルとは全く違うすっきりしないこの感じは一体なんだというのだろう。