内実コンブリオ



「咲宮 華さん」



やっぱり栗山くんだった。

また…呼んでもらえた。

部活途中なのか、ユニフォームを着ている。



「あの…咲宮 華さん…」


「はい。聞こえてます」



変なの。向かい合わせでいるのに。



「咲宮 華さん。…大丈夫っすか?」

「え?」

「あ、足!大分しんどそうっすけど」

「普通です」

「いや、普通なわけないっしょ!そんな足引きずって」



ばれてた。

でも、関わっちゃいけない。そう心に決めたのだから。

この場も上手くやり過ごそう。



「そんな事はな──

「ほら、支えるんで。保健室行きましょう」



足を引きずってなどいない、と否定しようとした自分の言葉が一瞬にして、シャットアウトされた。

そして、いつの間にか体勢が変わっている。

自分の左腕が栗山くんの肩に組まれていた。

さらには、栗山の手が腰にまわってる。



「だ、大丈夫ですって…」

「黙って。ゆっくりでいいっすから」



喋れなくなった。

黙って、って言われたから?

ううん、それだけじゃない。

こんな状況だから?

わからない。

ずっとドキドキいってる。

本当だったら、自分で関わらないって決めたから、この人には彼女がいるから、突き飛ばしてでも離れなきゃいけない。

なのに、できない。

どうして?

わかった。

足が痛すぎて、頭がまわってないんだ。

きっとそうだ。



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