内実コンブリオ
考えている内に保健室に着いてしまった。
「失礼します」
栗山くんが叫ぶが、保健室からは返事がない。
「なんだ、先生いねーのか。まあ、とりあえず座ってください」
そう言って座らせ、自分から離れていく足先だけを目で追った。
とりあえずこれ以上は、関われない。
ていうか、吹奏楽をやっている結菜ちゃんにでも見つかったら、えらいことになる。
ていうか…!なんで辛い想いばかりさせたのに、なんでまだ優しくしてくれるんだろう。
手当くらい自分でしようと保健室のどこかへ消えた栗山くんに、呼びかける様に言った。
「あ、保健室までつれてきてくれてありがとうございました。あとは、自分で出来るから部活へ──
…栗山くん…?
…う゛わあっ?!」
「どこ行こうとしてんすか」
首に強烈に冷たい物が当たっている。
首に氷の袋を当てられていた様だ。
思わず出た変な声を聞かれたと思うと、恥ずかしくなった。
「あとは自分で…」
「ほら、足出して」
無理矢理に、でも優しく隠していたはずの足を引っ張り出された。
その足は栗山くんの膝の上に乗せられ、靴下をめくられる。
あまりの手際の良さに見とれてしまう自分。
もしかして、慣れてる…?
「ううわ!!!」
「へ?」
「なんでこんなんになるまで放置してるんすか!」
見てみると、自分の右足首は蜂に刺されたかの様に大きく腫れ上がっていた。
どうりで足が動かないはず。
栗山くんは、手早くシップをはり、氷の袋を当ててくれた。
…後の沈黙に堪えかね、自分から一言を発する。
「ありがとう」