内実コンブリオ



今日も疲れた。

いつもより遅いからか、自分の他にちらほらとしか人がいない駅のホーム。

地元へと向かう急行列車に乗り込む。

夜の電車も席は全部埋まっていて、立っているしかない。

一つの運動だとでも思おう。

走り出した電車に揺られながら、ドアにもたれてうとうとする。

紙を手動で破り過ぎた疲れからか、羽が生えるところ、いわゆる肩甲骨が痛い。

この痛みから、今日の出来事を思い出す。

先輩方との会話。

やり取りを思い出しては、にやける。

きっと周りから見れば、ただの変質者だ。

でも、嬉しかったから気にしない。

とことん自分の世界に入ってやることにする。

自分の世界に入ろうとした時、電車は一つ目の駅にとまった。

この駅も淋しいもので、自分の乗っている車両には一人しか乗ってこない。

その一人とは男性。

いかにもサラリーマンという雰囲気で、自分の目線は胸元辺りでぶつかる。

…にしても、近い。

先程も言った通り自分は今、ドアにもたれている状態だ。

しかも今まで立っていたのは自分一人で、ドア付近の四隅はがら空きなのに、異常に近い。

わざわざ自分の前の吊り革につかまっている。

なんだ、この人。

珍しく自分が恐怖心を少し抱いている。

恐怖心を抱いているにも関わらず、怖いもの見たさという好奇心。

特に顔を見ることに意味はないのだが、嫌なくらい気になる。

あまりにもある人物と雰囲気が似ていたから。
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