内実コンブリオ
出来れば見ない方がいいんだろうけれど無性に気になってしまう。
そして、相手の顔が視界に入った瞬間。
背筋が凍る。
「びっくりやなぁ」
よほど自分が驚きのあまりに目を見開くかしていたのだろう。
口角を上げ、怪しく微笑むその人物とは、忘れもしない中学時代のボス的存在。
「…み、水川」
「よぉ。元気でやっとったか?くくっ」
あの頃と何一つ変わらない笑み、オーラに喋り方。
逆に変わったことといえば、2つ程。
中学時代のこいつからは、想像もつかないくらいの低音の声。
昔は見下ろしていたのに、見上げなければ見えない顔。
それでも、自分にのしかかってくるオーラは、相変わらず変わらない。
なんせ自分が顔を確認する前から恐怖を感じるくらいだもんな。
相当だ。
まさに地獄だ。
急行列車とは言えど、あと4つも駅にとまらなければならない。
生き地獄だ。
これ以上の拷問がどこにあるというのか。
もし、あそこで顔を上げなければ無事帰ることが出来たのかもしれない。
自分はただただ後悔した。