内実コンブリオ



早くはやく…

その時、自分の頬を包み込むかのように何かが触れた。

顎へとなぞられ、ぞっとくる。

現実を受け止めると、水川に顔をなぞられていた。



「昔と違って、反応が面白くなったな」



あまりの恐怖に胸が破れてしまいそうだ。

時間は時に意地悪で、嫌なことが起きている時ほど長いもの。

学生時代にきっとだれもが経験する、終業式の校長先生の話くらい長い。



「ん?なんとか言えや」



水川の言葉の数十秒後、扉が開く。

それと同時に手を払いのけて、飛び出した。

こんな風に背筋が凍りつくような思いをしたのは、何十年ぶりだろう。




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