次期王の行方 ~真面目文官は押しに弱い?~
クーデノムの部屋 ①
――コンコン
扉をノックされる音に気付き、自室で書類の整理をしていた青年、クーデノムは机上から視線を上げた。淡い茶色の短髪が動きに合わせて揺れる。
「…クーデノム?」
返事がないことに少しためらいがちの声が扉の向こうから聞こえてきた。
声の主はよく見知っている友人のもの。
「はい、どうぞ」
その言葉に従って扉を開けて部屋へと入ってきたのは同じ年頃の青年。濃い茶色の長い髪をひとつに束ねたなかなかの美男子。
「まだ仕事してたのか?」
「大丈夫です。急ぎの仕事でもないから」
そう言いながらクーデノムはペンを置くと、机に散らばった幾つもの書類を重ねて片付ける。
二十三歳という若さでありながら、数年前から王宮の国王近くに務める文官の地位に就き、忙しい毎日を過ごしている。
「それよりどうした? 相談か?」
「…相談というよりも、雑談だな」
彼、マキセはそう言って慣れた仕草で部屋のソファへと腰を降ろした。
「あれから1ヶ月、まだ何のウワサも聞こえて来ないなぁ」
「……あぁ、そのことですか」
クーデノムは軽めの果実酒をグラス2つに注ぎ、ひとつを彼にすすめて向かいのソファに座った。
「皆さんは、王子探しをやってますか?」
「そうだな。過去の王の足取りを追って、あっちこっちと使いを出してる」
たいして興味なさそうな口調だが、楽しんでいることは明白だ。
「王子が見つかるのは時間の問題でしょうかね」
「さぁ、どうだろうなぁ」